叙情詩と心理学
ことばは沈黙に
光は闇に
生は死の中にこそあるものなれ
飛翔せるタカの
虚空にこそ輝ける如くに
―――『エアの創造』
アーシュラ・K・ル=グウィン作の『ゲド戦記』は、この世の創造と神々の時代に続いて、英雄たちが活躍する叙事詩に近い形で語られています。
そして『指輪物語』と同様に、最初に物語全体の構想を指し示す、このような言葉がかかげられています。
この幻想の世界の詳しい地図が示されていることや、魔法使いや竜が活躍するところは、明らかに『指輪物語』の影響がみられます。
妖精そのものこそ出てきませんが、いわゆる妖精物語のひとつとして考えてもよいでしょう。
かつて大海の中に、たくさんの島々が寄り集まって作られたアースシーとよばれる一つの世界がありました。
これはその一つの島に生まれたゲドとよばれる一人の男性をめぐる物語です。
本来はそれぞれ別に独立して書かれたものですが、一種の三部作として考えられるので、日本ではまとめて『ゲド戦記』として紹介されています。
ゲドは女性である作者の心の中で次第に成長する英雄のイメージといえるでしょう。
それだけに、作者の主人公に対する愛着が文章の間ににじみ出ていて、それがまず本書の大きな魅力となっています。