叙情詩と心理学 4
ゲドは別名ハイタカとよばれる英雄ですが、女性にとっての心の中の男性のイメージは、飛翔せるタカが、大空に輝くように舞う姿そのものといえるでしょう。
ユング心理学では、女性の無意識の領域には、男性のイメージが形成されるといいます。
それは女性にとっては、空にはばたく精神そのものなのです。
ユングはこのようなイメージの存在をアニムスとよびました。
アニムスとは、ラテン語で魂や息吹、生命力を意味するアニマという言葉の男性形であって、女性の心のよりどころとして、魂というより、精神とよんだほうが適当なように思える心的な存在です。
そして、アニムスはしばしば英雄の姿をとって女性の夢や幻想にあらわれるといいます。
この物語は作者のアーシュラ・ルーーグウィンが、明らかにユング心理学を知った上で全体を考えたものと思われます。
かなり意識して、ゲドを心中の男性のイメージとして、とらえたものでしょう。
ユング心理学では、最初に意識の影の面であるシャドウとの対決があり、次に異性のイメージとして、男性はアニマ、女性はアニムスとの出会いがあります。
この異性のイメージを媒介として、女性は太母、男性は老賢人とよばれる人聞の理想像に近づくといいます。
そうしてはじめて無意識の奥にひそんでいる心全体であり、その中心であり、かつ意識と無意識の問の調和をはかるという超越的な機能をもった自己の存在を知ることができるのです。